6月のシンデレラ
緊張しすぎて映画に集中できるか不安だったけれど、始まった途端に映画の世界に引き込まれていた。
2時間半はあっという間に過ぎてしまった。
「すごく面白かった…!!」
「うん、面白かった」
「特にカーアクションのところ!!ドライブテクがすごすぎてカッコよくて!ハラハラしたけどすごく面白かった!」
「わかる、あのシーンのあの台詞が…」
「それそれ〜〜!!」
自分でもかなりテンションが高いとわかっていたけど、興奮が止まらなかった。
いつもは観てすぐに語り合える人がいなかったから。
同じ熱量で語り合えることがこんなにも楽しいなんて。
「…付き合い始めたきっかけは、映画の趣味が合ったから、にしようか」
「え?」
「馴れ初めは聞かれるだろうと思ってずっと考えてたんだけど、それが自然だろうなと思って」
「確かに…」
そんなこと頭の片隅に考えてもいなかった。
偽装恋人の解像度を上げるためのデートなのに、本末転倒だ。
私もしっかり考えないと…!
「あの、出会いは?」
「それはそのまま、行きつけの美容室の美容師とお客さんでどうだろう?」
「なるほど」
「あの映画でも言ってたけど、嘘の中にも真実を織り交ぜると信憑性が増すからね」
「納得しました」
すごいな、青人さん。
本当にしっかり考えてくださっている。