6月のシンデレラ


お互いの縁談が破談になったら、お役御免の偽装恋人なのに――…

何故か胸の奥がチクリと痛んだ。


「ぐーーーーーー…」


――はっ!!今のは…!
お腹が鳴ってしまった…!!


「何か食べていく?」
「えっっっ」
「俺もお腹空いたし」
「あっ、じゃあ…はい…」


デート中にお腹鳴る彼女ってどうなんですか??偽装だけど…。

いやいや、偽装だからこそバレてはいけない。
もっと気を引き締めていかなければ。

それにしても恥ずかしすぎる…。


「ここのパスタ、すごく美味しいんだよ」


連れて来てもらったのは、普段なかなか行かないようなおしゃれなイタリアンだった。


「永美里はどんな食べ物が好き?」
「なんでも食べます。パスタもハンバーグも大好きなので」
「そう」
「あっ!」
「どうかした?」
「こんにゃくだけは…ちょっと苦手かも」
「そうなんだ」


あのブニュブニュした食感があまり得意じゃないのよね…。
伯母が好きなのでこんにゃく料理も作るんだけど。


「こんにゃく料理作る時はあまり私は食べないようにしてるの」
「料理するんだね」
「昔から家事は私の仕事なので」


身寄りのない私を置いているのだから、働くのは当然と教えられ、家事全般はずっと私の仕事だ。


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