6月のシンデレラ


社会人になったら一人暮らしをしたいと申し出た時は、とても怒られた。
お前がいなければ誰が家事をするんだ、と。


「…永美里、つらくはないの?」
「どうして?」
「だって、なんだかその、小間使いみたいに聞こえるから」


青人さんは心底心配してくれているようで、優しい瞳を真っ直ぐに向けてくれる。
それが嬉しくて、少しくすぐったい。


「大丈夫。私が好きでやっていることだから」


おかげで家事は人並以上にできる自信はある。


「…永美里は強いね」
「強い?」
「うん、とても強いと思うよ」
「えっと…あまり力はないし、特に格闘技とかもやってないけど…?」
「そういう意味じゃなくて、心がだよ」


私はびっくりして青人さんを見つめた。


「自分の運命から逃げず、ひたむきに生きていて…すごく強いと思う」

「…そんなこと、初めて言われました」


どちらかと言うと、浮世離れしていて周りが見えてない、現実が見えていないと言われることが多かった。


「俺は逃げてばかりだから」

「そうなの?」

「父と向き合うことから逃げ続けているからね」

「でも、私は青人さんは素敵だと思う」

「え?」

「自分のやりたいことを貫き通せることは、とても素敵なことだと思うわ」


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