6月のシンデレラ
「念のために確認するけど、勝手に家を出るつもりはないの?」
「……」
舞ちゃんにも何度も言われている。
早く縁切って逃げろ、と。
でも、
「…私を育ててくれたことには代わりないし、唯一の血縁者だから。
不義理なことはしたくないの」
結婚するつもりがない時点で不義理なのかもしれないけれど、そこはどうしても譲れない。
「私今まで伯父と伯母の迷惑にならないように生きてきた。家事も全てこなして、勉強も頑張って伯母が望んだ短大に行き、仕事も伯母が選んだ百貨店に勤務して。
それでよかったの、どうしてもやりたいことはなかったから。
でも、一つだけ叶えたい夢があるの」
つまらない夢かもしれないけど、両親が亡くなる前から夢見ていた。
「自分の家庭を持ちたいんです。
贅沢なんてしなくていいから、大好きな人と結婚して、いつか子どもが産まれて。
毎日笑顔が溢れる温かい家庭を作りたい。それが私の夢…」
私の両親はとても仲が良かった。
両親は心から私を愛してくれて、たった12年しか一緒にいられなかったけど、とても幸せだった。
あの平凡な幸せを、もう一度――…
「――あっ、ごめんなさい!なんか急に語ってしまってっ」