6月のシンデレラ
偽装恋人の青人さんに語っても、仕方のないことなのに。
でも、青人さんは優しく微笑んだ。
「素敵な夢だね」
また、胸の奥がきゅうっと苦しくなった。
度々妄想する私の未来の旦那様は、いつもハルトくんだった。
大人になった姿を勝手に妄想して、王子様が迎えに来てくれるとずっと夢見ていた。
でも今、青人さんが旦那様になったら…って一瞬でも想像してしまった。
ダメなのに、青人さんは偽装恋人なんだから…っ。
「そういえば、青人さんはどうして美容師になったの?」
いらない妄想を取り払いたくて、話題を変えた。
「…昔、よく一緒に遊んでた女の子がいたんだけど、その子の髪をアレンジしてあげたら、すごく喜んでくれて。それが嬉しくて、美容師の仕事に興味を持ち始めたのがきっかけ、かな」
「へぇ〜」
「あと幼馴染の存在も大きいかもな。思春期になって急に髪に癖が出始めて、見た目が気になる頃だから色々嘆いててさ。
中学生の時だからお金もないし、二人でスタイリング剤とか色々試して模索して、それが結構楽しかったんだよね」
思い出しながら話しているからなのか、青人さんはいつもより楽しそうだった。
「何となくイケてない?って感じになったら、幼馴染も喜んだし俺も嬉しかった。
意外と自分に向いてるのかもしれないと思って、真剣に目指すようになった感じかな」
「すごい!なんか素敵!」