6月のシンデレラ
「幼馴染がよく喋るからかな…俺は基本いつも聞く側だし」
「じゃあ、お客様のお話も聞いてあげたら喜ばれるかも!」
「え?」
青人さんはお客様と話すのが苦手で、店長の馬野さんにももう少し話せと言われているらしいのだけれど。
青人さんが無理に話さず、お話を聞いてあげる方に徹してみたら良いんじゃないかと思った。
「話しかけられたくない方もいるけど、話したい方もいると思うの。うちの百貨店でもそうだから」
「そうか、なるほど…」
「…なんて、私ったら偉そうにごめんなさい」
「いや、ありがとう。前向きにやってみるよ」
そう言ってくれたところも嬉しかった。
青人さんの年上だからと変に肩を張らず、年下の私にも目線を合わせてくれるところが、すごく好き。
あっ…、好きっていうのは人としてという意味で…やだ、誰に向かって言い訳してるのかしら――…
「またご馳走していただいて、ありがとうございました」
「いやいや、大したことないから」
「すごく美味しかったです!」
「それはよかった。ここ、知人が経営してておすすめなんだ」
「へぇ…また来たいです」
「是非。それにしても永美里、たまに敬語が混じるよね」
「あっ…」
なるべくタメ口になろうと心がけてはいるんだけれど…。