6月のシンデレラ
両肩をガシッと掴まれ、目を覚ませとでも言いたげな気迫の舞ちゃん。
「本当に大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫よ…」
何をもって大丈夫なのかわからないけど。
恋に落ちるな、ということなら既にもう片足は突っ込んでしまっている気がする。
「その人、本当に彼女いないの?」
「いないと思う…。いたら偽装恋人なんてそもそも必要ないもの」
「わからないわよ。永美里のピュアさに漬け込んで、本当は別に女がいるかも…」
「青人さんはそんな人じゃないっ!!」
自分でも驚くような大声をだしてしまった。
「永美里…」
「っ、ごめんなさい、大声だして…。
でも、本当に優しい人なの…」
「――わかった。永美里がそう言うなら、もう何も言わない」
舞ちゃんは肩を竦めると、ポンポンと私の頭を撫でた。
「私は永美里に幸せになってほしい。もし本当にその人が好きなら、応援する」
「舞ちゃん…!」
「だから偽装の関係なんて早くやめた方がいい。つらくなるだけよ」
「…そうよね。わかってる」
本当に引き返すのなら、今しかない。
割り切って偽装恋人を続けるのか、それとも――…
そのためにも、私自身の気持ちをはっきりさせたい。
この知らない気持ちと向き合って。