6月のシンデレラ
* * *
この仕事は伯母に紹介された百貨店に入社したら、たまたま美容部門に配属されたのだけれど。
今はこの仕事に就けて良かったと心から思っている。
私は学生時代とにかく地味で、まともに化粧の仕方も知らなかった。
配属された当初は、先輩に「化粧が地味すぎる」と怒られた程。
メイクの基礎から学んで、楽しさを知って、その楽しさを伝える仕事に就けてとても幸せだと思う。
最近は美容に関する資格を取得したくて色々勉強している。
「あの、リップが欲しいんですけど、どんなものが似合うかわからなくて…」
「大丈夫ですよ。一つ一つお見せ致しますね」
こういったお客様の接客は多々ある。
気に入るものを見つけて購入いただき、嬉しそうな笑顔が見られるとこの仕事をやってよかったと実感できる。
「お疲れ様でした!」
今日は少し残業してしまった。
これから帰宅して急いでごはん作って、お風呂入って寝て、また仕事に向かう。
これが私のいつものルーティーン。
たまに舞ちゃんと電話したり、直接会って話したり。
そんな日々に、イレギュラーが訪れた。
「お疲れ様。ハンバーグのおいしいお店があるので、行きませんか?」
仕事終わりに携帯を見ると、青人さんからこんなメールがくるようになった。
それだけで、今日一日の疲れが吹き飛ぶ。