6月のシンデレラ


散々私にタメ口で、と言うのに青人さんはメールでは敬語だ。
そんなところが丁寧な人だなぁと感じて、キュンとしてしまう。

「行きます」と返信し、駅までスキップしてしまいそうなくらい、舞い上がっていた。

青人さんに会いたい。

やっぱり私、青人さんのこと――…



「――永美里さん!」

「え…虎橋、副社長…?」


突然現れた想定外の人物に、急に血の気が引いた。
急に夢から現実に引き戻されたような。

虎橋副社長は小太りのお腹を揺らしながら、にこやかに私に近づいた。
反射的に後ずさってしまう。


「どうしてここに…?」

「永美里さんを待っていたんだよ。今夜は三つ星ホテルのレストランを予約しているんだ。
夜景を楽しみながらディナーをしよう」

「…でも、家に帰って食事を作らないといけないので」

「大丈夫、伯母さんにはもう許可を取ってある。
朝までご一緒にどうぞ…ってね」


その言葉にゾッとして、全身が凍りつく思いがした。
虎橋副社長の目が、まるで獲物を狩るような野生の肉食獣に見えて、一刻も早く逃げ出したかった。
でも、足が震えて動かない。


「さあ、行こう」

「や…っ」


強引に腕を掴まれ、鳥肌が立った。
嫌、触られたくない。

助けて、青人さん――…っ!!


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