6月のシンデレラ
「…だって、約束したの。
迎えに来るから、大人になったら結婚しようって…」
「いや何歳の話よ!?」
「あれは私が12歳の頃…」
「えっ今から回想始まる!?」
まだ両親が健在だった頃、あれは6月だった。
私は両親に連れられてとある大きなお家に行った。
両親は大人同士で話があるからと言って、私は一人お庭で遊んでいた。
お庭がとても広くて、大きな木が植えられていたから、登った。
そこに木があったから登ったのだ。
だけど、足を踏み外した私は落っこちた。
地面に叩きつけられることはなく、私は誰かを下敷きにしたおかげで怪我一つなかった。
目の前にいたのは、王子様のようにカッコイイ男の子だった。
「――お姫様が落ちてきたのかと思った」
私に向かって優しく微笑みかける彼に、一目惚れした。
本当に王子様だと思った。
「俺はハルト。君は?」
「エミリ…」
「エミリ。よろしくね」
ハルトくんは私よりも三つ年上の男の子。
上から落ちてきた私を受け止めてくれたのに、何ともない様子だった。
「エミリ、一緒に遊ぼう」
それからハルトくんと一緒に遊ぶようになった。
器用なハルトくんは私の長い髪をいじりたがり、シンデレラに魔法をかけてくれるみたいに、私の髪をかわいく結いてくれた。