6月のシンデレラ
――ドスッ!
「…うっ、ぐうう……っ」
けれど、次の瞬間副社長の巨体が吹き飛んだ。
何が起きたかわからなかったが、目の前にはお腹を押さえて転がる虎橋副社長の姿があった。
もしかして、咄嗟に蹴りを……?
「貴様、こんなことをしてどうなると思ってる…ぼくは虎橋グループの副社長だぞ…っ!!」
「そちらこそ、九竜家の妻となる女性に手を出して、どうなると思っているんですか?」
「なっ、九竜だと……」
「申し遅れました、僕は九竜青人といいます。
祖父の代からお世話になっております」
「……っ!!ヒィ…っ」
虎橋副社長は急に顔面蒼白になると、その場を逃げるように去っていった。
副社長の姿が見えなくなると、青人さんは私の顔を覗き込んだ。
「永美里、大丈夫?」
「あ、大丈夫です…っ!」
「よかった…」
「どうしてここに?」
「あれ、メールで言わなかった?今夜ハンバーグのお店にって」
「えっ!?今夜だったんですか!?」
「あれっ」
青人さんは自分の携帯を開いてメールを見返し、「あっ」と声を漏らして頭を抱えた。
「…ごめん、書いたつもりだったんだ…永美里の職場の近くのお店だから、今夜どうかなって……」
「だいぶ言葉足らずですね…」