6月のシンデレラ
青人さんは恥ずかしそうに俯く。
「……ごめん、俺こういうところがあるんだ」
かわいい……。
さっきまであんなにカッコよかったのに、かわいい一面もあるなんて…また胸がキュンとしてしまう。
「でも、おかげで助かりました。ありがとうございます」
「いや、間に合ってよかった」
「あの、もしかして虎橋グループとご関係が…?」
名前を出した途端に、虎橋副社長の態度が変わったけれど、何かあるのかしら?
「……。」
「…青人さん?」
「……ごめん、永美里に嘘をついてた」
「え?」
「父に結婚を迫られてるって言ったのは、嘘なんだ」
「そ、そうなの…?」
どうしてそんな嘘を――?
じゃあ、偽装恋人になったのは……?
話が見えなくて、ただじっと彼の顔を見つめることしかできない。
「君が覚えていないなら、名乗り出るつもりはなかった。きっともう忘れていると思ったし、何もしてあげられなかった俺が今更…って思った」
「え、どういう…」
「でも、結婚するって聞いて…しかも望まない結婚をさせられそうになっているって知ったら、口が勝手に動いてた。
…自分でも驚いたよ、こんなに口が回るんだって」
「は、青人さん…?」
「その名前の奴と、前にも会ったことない?――エミリ」
え…………、まさか――……
「……ハルトくん?」
「久しぶりだね、エミリ」
その笑顔は私の記憶の中にある、ハルトくんと同じ笑顔だった。
どうして今まで気づかなかったんだろう……。
やっと、この知らなかった気持ちに、名前を付けられた。