6月のシンデレラ
「俺もエミリが好きだよ」
「…ほんと?」
恐る恐る確認するように、上目遣いで見つめるエミリがかわいい。
「本当」
そう答えた時、嬉しそうに頬を桜色に染め、でもどこか安堵した表情を見せたエミリ――その瞬間、俺の中で何かが切れた。
「…エミリ、ちゃんと意味わかってる?
俺はエミリのこと、女の子として好きなんだよ」
戸惑いながら見つめるエミリの唇を奪う。
初めて触れた好きな子の唇はとても柔らかかった。
――エミリが欲しい。
自分自身に驚くくらい、欲深い一面があることを知った。
「エミリ、絶対に迎えに行く。
だから大人になったら、結婚して」
どうしても、この子が欲しい。
でもそれは、王子様がお姫様にプロポーズするような綺麗なものじゃない。
この無垢で汚れを知らない女の子を、俺だけのものにしたい。
閉じ込めて、全てを暴いてグチャグチャに愛して、その瞳に俺しか映らなくしたい。
そんなドロドロとした醜い感情だなんて知らずに、エミリは清浄無垢な涙を溢す。
まだこんな感情を抱いてること、エミリに知られたくはない。
だから今は隠し通す。
エミリの望む紳士的な王子になって、君のことを守りたい。
――だけど、その直後からエミリは俺の前から姿を消した。