6月のシンデレラ


結局エミリは伯父と伯母に引き取られ、そのまま二度と会うことはなかった。


「お前が会いに行って何ができる?永美里ちゃんのことはそっとしておいてあげなさい。
お前にできることは何もない」


父はそう言い切って、エミリの行方を教えてくれなかった。

そこからだ。
今まで募りに募っていた父への不満が、肥大化していったのは。

九竜家の跡取りというレールを敷かれ、その上を進むことを義務付けられた人生に嫌気がさした。
それなのにどんなに頑張っても、父は俺を認めない。

弟子たちのことは褒めても、息子のことは決して褒めない。

癒しと安らぎを与えてくれていたエミリはいない。
エミリに会うことも許されない。

どうして、どうして、どうして――…っっ!!


まだ子どもだった俺は、怒りと不満を父にぶつけることしかできなかった。


……ごめん、エミリ。
一番傍にいてあげたいのに、それすらもできない。

何もできない俺はなんて無力なんだろう。
こんな最低な奴のことなんか、もう忘れているかもしれない。

――それでもいい、エミリが幸せに生きてくれるなら。


< 36 / 100 >

この作品をシェア

pagetop