6月のシンデレラ
結局エミリは伯父と伯母に引き取られ、そのまま二度と会うことはなかった。
「お前が会いに行って何ができる?永美里ちゃんのことはそっとしておいてあげなさい。
お前にできることは何もない」
父はそう言い切って、エミリの行方を教えてくれなかった。
そこからだ。
今まで募りに募っていた父への不満が、肥大化していったのは。
九竜家の跡取りというレールを敷かれ、その上を進むことを義務付けられた人生に嫌気がさした。
それなのにどんなに頑張っても、父は俺を認めない。
弟子たちのことは褒めても、息子のことは決して褒めない。
癒しと安らぎを与えてくれていたエミリはいない。
エミリに会うことも許されない。
どうして、どうして、どうして――…っっ!!
まだ子どもだった俺は、怒りと不満を父にぶつけることしかできなかった。
……ごめん、エミリ。
一番傍にいてあげたいのに、それすらもできない。
何もできない俺はなんて無力なんだろう。
こんな最低な奴のことなんか、もう忘れているかもしれない。
――それでもいい、エミリが幸せに生きてくれるなら。