6月のシンデレラ
そしてあの日、再び君と出会った。
一目見て、エミリだとわかった。
昔の面影を残したまま、美しく成長していた。
まさか、こんなところでまた会えるなんて思ってもみなかった。
だけど、今更俺は君に名乗り出る資格はない。
一番辛かった時に傍にいられなかった俺なんか…きっともう忘れているだろうし、今更迷惑なだけだろう。
この分厚い瓶底メガネのおかげで顔は隠せているから、このまま黙っているつもりだった。
そう思ったけれど――、
「…ところで永美里ちゃん、聞いたよ。結婚するんだって?」
店長の言葉を聞いた瞬間、思わずガシャーン!とカラー剤を入れるための容器を落としてしまった。
永美里が、結婚……?
「私は、まだするつもりないんですけど」
「伯母が乗り気みたいで…どうやって説得しようかなって思ってたところです」
しかも、政略結婚ということなのか……?
「彼氏がいるって言っちゃえば?」
「いませんよ」
「そこはいなくてもいるって言ったら?」
「伯母は絶対会わせろって言いますよ」
その時、自分の中で一つの案が思い浮かんだ。
自分でも何を突拍子のないことを考えているんだろうと思った。
でも、気づいた時には彼女を追いかけて口にしていた。
「…失礼ですが、自分が彼氏役になりましょうか?」