6月のシンデレラ
大体の顛末を聞いた永美里は、少し不満そうだった。
やや頬を膨らませる表情がリスのようでかわいい。
「申し訳ないけど、虎橋グループとの関係を知ったのは最近なんだよ。相手のことを調べていたら、まさか毎年豪華なお中元やお歳暮をくれるあの虎橋とは思わなくて」
「そうじゃないわ!」
「え?」
「どうして最初からハルトくんだって名乗り出てくれなかったの!?」
永美里は大きくて愛らしい目を吊り上げて怒った。
「それは、名乗り出る資格なんてないと思ったし、俺のことなんて忘れてると思ったから」
「忘れたことなんてない!ずっと待ってたの!迎えに来てくれるって信じてたから!」
永美里は唇を震わせ、瞳も潤んでいたが決して涙を溢さなかった。
「私が今まで頑張ってこれたのは…ハルトくんとの約束があったから……っ。
なのに私、青人さんに惹かれてしまって…苦しかった。あんなに大好きだったのに、別のひとに惹かれてどうしようって…認められなくて……っ!」
「――永美里っ!!」
小刻みに震える華奢な体を強く抱きしめた。
俺の腕の中にすっぽりと収まってしまう小さな体も、フランス人形のような長くて艶やかな髪も、震える声も全てが愛しい。