6月のシンデレラ


「……傍にいてあげられなくて、ごめん」

「ふ…っ、え〜〜〜ん……」


まるで9年前に戻ったように、永美里は子どものように声をあげて泣きじゃくる。

ちなみに今は、流石に目立つので駅前から移動し、人通りから外れた公園のベンチに座っている。
人が絶対に来ないとは言い切れないから、誰にも彼女の泣き顔を見られないように、きつく抱きしめた。

永美里が落ち着くまでずっと、抱きしめ続けた。

やがて、少しずつ落ち着いたのか泣き声が止む永美里を少しだけ離す。
頬を濡らす涙は月明かりに照らされて、宝石のように輝いて見えた。

潤んだ視線が絡まり合うのを合図に、引き寄せられるように唇が重なり合う。
角度を変えてもう一度重ね、離れてはまた重なる。
小さな口が開かれた瞬間に舌をねじ込み、永美里の舌を絡めとる。

ここが外であることも忘れ、むさぼるように永美里を求めた。
9年前のファーストキスよりもっと深く、もっと情熱的に、もっと欲望をむき出しにして唾液を吸い取った。


「……うちに来る?」


二人の唇から伸びる白い糸が、まだ繋がっていたいというように、名残惜しく伸びている。


「……」


こくりと頷く永美里に、念押しで尋ねた。


「本当に?ちゃんと意味わかってる?」

「……はい」


林檎のように顔を真っ赤にしながら、小さく頷く永美里はこの上なくかわいい。

行くと決めたのは永美里だ。
今更嫌がっても、もう遅い。

深夜0時どころか、朝まで離してあげられそうにない。


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