6月のシンデレラ


「永美里……」

「ん……っ」


青人さんはそんな私の心を見透かしてか、顎を持ち上げられて唇を塞がれる。
ついばむようにキスされて、まだ慣れない私はされるがままだけど、気持ち良くて夢中になる。


「……起きないとやばいね」

「ん……」


……このままだと遅刻しちゃう。


* * *


「朝食どうしようか」

「私が作るので!」

「でも、冷蔵庫に何もないんだよね…」


冷蔵庫の中は本当にガランとしていた。


「青人さん料理しないの?」

「自分ではなかなかめんどくさくて…たまに幼馴染が作りに来てくれるよ」

「私もよく幼馴染の家でご飯作るわ」


舞ちゃんは家事全般ダメなので、たまに掃除もしたりする。
しっかりしてるのに家ではズボラというか、めんどくさがりなのよね。


「青人さんちゃんと食べてる?」

「レトルトとか…」

「ダメよ!栄養が偏るわ」

「幼馴染にも言われるよ」


美容師の仕事は立ち仕事で大変なのに、ちゃんと食べなければ体を壊してしまう。


「今夜私が夕飯を作ります!」

「えっ」

「料理なら任せて!青人さん、何が食べたい?あと苦手なものも教えて」

「苦手なものは…野菜かな」

「野菜苦手なの!?」


野菜こそちゃんと摂らなければいけないのに!
もしかして、青人さんってすごく偏食?


「昔から苦手なんだよ…子どもっぽいって思った?」


ちょっと拗ねたような表情がかわいくてキュンとした。
意外な一面を知ってしまった。


「じゃあ美味しくお野菜を食べてもらえる献立にするわね」


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