6月のシンデレラ
そのコーヒーメーカーはブラックだけでなく、エスプレッソ、カフェラテやカプチーノも飲めるのだそう。
試しに青人さんがボタンを押すと、あっという間にまろやかな泡が乗ったカプチーノが出来上がった。
「すごい!」
「どうぞ」
一口飲んで、しっかりとコクのあるエスプレッソの苦味が広がる。
砂糖をかければふわふわの泡との相性が良く、この朝に相応しいスウィーティーなモーニングコーヒーとなる。
「永美里、」
名前を呼ばれて顔を上げた瞬間、キスで唇の泡を掬い上げられた。
「っ!?」
「甘いね」
甘いのは砂糖の味だけではない、と思う。
こんなに甘くてゆったりとした、二人で過ごす朝。
まだ夢の続きなんじゃないかと錯覚してしまうけれど、そんなことはない。
私も青人さんも仕事だから。
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
家を出る前にも玄関でキスを交わした。
ぼうっとしながら家を出て、伯母に「昨日は連絡できずにごめんなさい。今日も遅くなります」とメールした。
特に返事はなかった。
「おはようございます…」
「おはようございます。あら?美兎さん、昨日と同じ服じゃない?」
出勤した途端、めざとい先輩に私服を指摘されてドキッとする。