6月のシンデレラ
「あっ…と、これは」
「さては彼氏のとこに泊まってきたでしょう?」
ニヤニヤする先輩の言葉に、私はハタとする。
私たちって、付き合っているのかしら……?
そういえば、青人さんに「好き」も「付き合って欲しい」も言われてない。
私自身もちゃんと告白したか覚えてない。
……もしかして、私ったらものすごい過ちを犯してしまったのでは――?
キスもベッドの上で抱き合ったのも、偽装恋人の延長……?
偽装の関係でここまでするもの…?
それとも告白はされてないけど、青人さんは私のこと、好きでいてくれているの?
わからない。
あまりにも恋愛の知識が乏しすぎてわからない。
ずっとハルトくんとの初恋の思い出を抱きしめていた私が、一足飛びなんてものじゃない程飛び越えてしまって、あまりにも温度差が激しすぎる。
そもそも、もう偽装恋人は必要ないのよね…?
青人さんの話では、虎橋さんから正式に破談の申し出がくるはずらしいし。
青人さんも結婚を迫られていたわけではなかったということだし……。
では、本当に今の私たちの関係って何なのかしら?
「…………。」
青人さんには好かれている、とは思う。
だってすごく優しかったんだもの…!
まるで壊れモノを扱うみたいに、優しく私に触れてくれた。
あの優しさは嘘なんかじゃない。