6月のシンデレラ
「ごめん、あいつが来るかもしれないの忘れてた…合鍵渡してるんだ」
「そうなの」
「後でちゃんと話しておくから気にしないで」
「あ、あの、青人さん」
「ん?」
今、聞いても良いのだろうか。
いや、聞くなら今しかない気がする。
何となくだけど、ここで聞かなかったらもうタイミングがない気がした。
「わ、私…っ、青人さんの彼女なの…!?」
緊張して、微妙に声が裏返ってしまった。
「え!?違うの!?」
「だ、だって…告白されてないから…っ」
「……嘘、俺告らなかった?」
「……」
こくりと頷く。
すると、青人さんは頭を抱える。
「……本当にごめん。言ったと思ってた。俺最低なことしてたんだね…」
「いえっ、私も言えてなかったので…」
「いや、もう、本当に最悪だ……」
なんだか青人さんを落ち込ませてしまったみたい。
「永美里」
青人さんは顔を上げ、そっと私の手を握りしめると、真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめた。
「順番が逆になってしまったけど…、永美里のことが好きです。
結婚を前提に付き合ってください」
「…はい」
思わず目尻に涙が滲む。
潤んだ瞳に映った青人さんは、申し訳なさそうに私の涙を指で拭った。
「…ごめん、不安にさせてた?」