6月のシンデレラ
「違うの、嬉しくて…」
あんなに悶々としていた気持ちが一気に吹き飛んで、じんわりと胸が温かくなる。
「私も、青人さんが好きです」
好きで、好きで、愛しくて
思わず涙が溢れる程に。
「私の初恋、二度も叶っちゃった…っ」
「永美里……」
青人さんにぎゅっと抱きしめられて、抱きしめ返して、また胸が温かくなる。
「これからはずっと傍にいる。もう離れないよ」
「うん…私、今が一番幸せかもしれない」
私の人生、不幸だとは思いたくないけど、両親が亡くなってから幸せに生きてこれたとは言い難い。
孤独を感じる夜もあったし、何があったわけではなく自然と涙していたこともあった。
だけど、ふたりでなら――
幸せに笑い合っていける。
青人さんとなら、明るい未来が描ける気がするの。
「…まだだよ、永美里」
「え?」
「今だけじゃなくて、これからもっと幸せにする」
「青人さん…」
頬に触れる手にまた手を添えて、そこから伝わる熱が愛おしくて。
目を瞑ったその時――、
RRRRRR……
突然鳴り響いた携帯電話。
画面に表示された名前を見て、指先から凍りつくかと思った。
「どう、して……」
着信音はけたたましく鳴り続ける。
こんなにも着信音が耳障りで恐ろしいと思ったのは、一体いつ振りだろう――。