6月のシンデレラ
電話越しでも伝わる、低くて冷たい声。
「あんたは知らないかもしれないけど、うちの会社結構な経営難なのよ。
あんたが虎橋副社長と結婚すれば、虎橋グループの後ろ盾を得られたのに、台無しにして。
あんたの利用価値なんて顔と体しかないんだから!!」
「ゆ、祐巳姉さん、私……」
「とにかく、次の縁談は絶対に成功させなさい。
死んだ両親の代わりに育ててもらった恩は体で返すのよっ!!」
大声でそう吐き捨て、電話は一方的に切れた。
「…………。」
「…永美里?」
青人さんが心配そうに私の肩を抱いて、見つめる。
「大丈夫?」
「青人さん…、私どうすれば……」
「永美里、訳を話して」
「…っ、」
「何があっても受け止めるし、俺は永美里を誰にも渡さないよ」
青人さんは優しくぎゅっと抱きしめてくれた。
その温もりに安心して、私はポツリポツリと話し出す。
「……今のは、従姉からなの。
私を引き取ってくれた伯父と伯母の娘さんで、私より二つ年上で」