6月のシンデレラ


祐巳姉さんには、心から愛してくれる両親がいる。

伯父も伯母も娘を大層可愛がり、欲しいものはすべて与えていた。
祐巳姉さんのために高級マンションも買った。

私にないものばかり持っているのに、どうしてそこまで私を妬むのだろう。

一旦電話の相手がそんな風に疎まれ続けた従姉だと話した上で、電話の内容も青人さんに伝えた。


「……虎橋との縁談が破談になったと聞いて、今伯母たちが躍起になって別の縁談を探していると」

「な……っ」

「会社が想像以上に経営難みたいなの。大きな会社の後ろ盾を得ないと倒産するんだわ…」

「だからまた、永美里を嫁に出すつもりなのか」

「そうみたい…」


所詮私は伯母たちにとって、便利な道具でしかないのだろう。


「……大きな後ろ盾を得られるのなら、永美里は望まない結婚をしなくて済むのか」

「え?」


青人さんは私を強く抱きしめた後、ゆっくり離して私の目を真っ直ぐ見つめた。


「永美里、しばらくの間待っていて欲しいんだ。
必ず説得してみせるから」

「どういう……」

「俺のことを信じて」


青人さんの言っている意味はわからなかったけど、あまりにも真剣な瞳をしていたから、それ以上は何も聞かないことにした。


「信じるわ」


何があっても、青人さんのこと信じてる。


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