6月のシンデレラ


「…ねぇ、巧さん。青人さん、何してるのかしら」


青人さんの家に来てから2週間が過ぎた。
未だに青人さんは話してくれない。

幼馴染で親友である巧さんには、何か話してるかもしれない。
巧さんはちょっと困ったような表情を浮かべた。


「大丈夫、青人のこと信じてやって」

「信じてるけど、何をしてるのかちっとも教えてくれないんだもの。
それに伯母たちが何も言ってこないのも気になるわ…」


一度だけ荷物を取りに帰ったことはあるも、伯父も伯母も留守だった。
青人さんにしなくていいと言われ、ちょっと気が引けたけど何も連絡していない。

にも関わらず、伯父も伯母も何も言ってこない。

本当に青人さん、何をしているのかしら――…


「青人、親の敷かれたレールを進むのは嫌だって出て行ったけど、自分が決めたことはやり通す奴なんだよ。
何だかんだで武道の稽古も真面目にやっててさ、特に弓道は小学校から高校までずっと一番であり続けた」

「すごいですね」


弓道やってる青人さん、絶対にカッコいいから見てみたい。


「他の武道はやめたけど、弓道だけは未だに時間作ってやってるんだ。
狙った的は絶対に外さない。必ずど真ん中を射抜く。
だから今も、的のど真ん中を射抜きに行ってるんだよ」


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