6月のシンデレラ
「よかったの?おつまみでも作ろうかと思ってたのに」
「いいんだよ。永美里、ご飯は?」
「巧さんと食べたわ。青人さんの分も作ってあるわよ」
「ありがとう、いただくよ。
…巧とはよくご飯食べるの?」
「ええ、たまに。巧さんがご飯作って下さることもあるの。すごいのね、巧さん。
とっても料理上手で何でも美味しかったわ」
そう言うと急に青人さんに、後ろから抱きしめられた。
「はっ青人さん!?」
「なんであいつ…俺がいない間に」
「違うわ、巧さんは心配して様子見に来てくれてるのよ!」
巧さんにも何となくの事情は話していた。
青人さんの大切な親友だからというのもあるけれど、巧さんがとても話しやすい人だからというのもある。
「わかってる。わかってるけど、それでも妬ける」
「えっ?」
「俺より永美里と一緒にいる時間が長いのは…ずるいだろ」
青人さん、ヤキモチ妬いてるの?
表情は見えないけれど、拗ねた子どもみたいな声色にキュンとしてしまう。
「長くないわよ。巧さんが来るの週に2回とかだもの」
「結構来てるな…合鍵なんか渡すんじゃなかった」
「本当に仲良しなのね。ちょっと羨ましい」
「――これ」
突然目の前に鍵を見せられたかと思うと、私の手のひらに乗せられる。
「ごめん、ちゃんと作るのに時間かかって遅くなったけど、永美里の合鍵だよ」