6月のシンデレラ


* * *


翌日。私は青人さんとともに9年ぶりに青人さんの実家にお邪魔した。

昔と変わらず大きくて立派な日本家屋のお家だ。
お屋敷といった方が正しいかもしれない。

青人さんに案内され、緊張した面持ちで長い廊下を歩く。
数々の武道場があり、空手や剣道、弓道といった武道をたくさんの人たちが学んでいた。

長い廊下を渡った先に、普段から生活する本邸がある。


「ただいま」

「おかえり、青人」


出迎えてくださったのは、上品そうな和服姿の女性だった。


「こちらが美兎永美里さん」

「まあまあ、あなたがあの時のお嬢さん…美しく成長なされて」

「母です」


この方が青人さんのお母様…!


「は、初めまして、美兎永美里と申します。この度はお招きいただきありがとうございますっ」

「青人の母でございます。ゆっくりしていらしてくださいね」


お母様はとても丁寧で優しそうな方だった。
少なくとも歓迎はされているようで、安心する。

母子の雰囲気から察するに、お母様との関係は良好のようだ。

それから奥の和室に通された。


「…父さん」

「入りなさい」


そこで待っていたのは、和服姿の厳格そうな男性。
座っているだけで計り知れないオーラが漂っている。

どことなく青人さんと似ているこの方が、この家の当主であるお父様なのだろう。


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