6月のシンデレラ
お父様の醸し出すオーラに気圧され、自然と背筋は伸びるし何故か冷や汗もかいていた。
「あなたが永美里さんだね」
「は、はいっ」
急に名前を呼ばれ、思わず声が上ずってしまう。
「美兎永美里と申しますっ」
「あなたのご両親にはとても世話になった。幼いあなたもよく遊びに来ていたが、覚えているかね?」
「も、もちろんですっ!」
「そうか。とても立派に成長されて、ご両親もさぞお喜びだろう」
「そんな…ありがとうございます」
お父様の言葉には、私に対する気遣いや配慮の気持ちが感じられた。
厳格なお人かと思っていたけれど、とても優しい方だと思った。
「永美里さん。大体の話は青人から聞いている。
ご両親を亡くされてから、大変苦労をされてきたようだ」
「いえ、とんでもないです…」
「蛇塚コーポレーションが傾いていることは聞いているよ」
蛇塚コーポレーションは伯父の会社名だ。
「しかし、まさか姪を嫁に出して後ろ盾を探していたとは…何とも前時代的だな。
念のために永美里さん自身の意思を確認しておきたいのだが」
私の意思…それは当然決まっている。
お父様の目を真っ直ぐ見て、はっきりと自分の意思を述べた。
「私は、私の意思で結婚したいと思っています。
伯父にも伯母にも大変感謝していますが、正直政略結婚の道具にはなりたくありません…」