6月のシンデレラ
相手はできれば青人さんが…とはまだ言えず、その言葉は飲み込んだ。
お父様は静かに私の言葉を聞いた後、徐に切り出す。
「ふむ、よくわかった。
私としても世話になった人の娘さんが不本意な立場に立たされているのは見過ごせない。
そこで、だ」
お父様の説明で、何故伯母たちから何の連絡もなかったのかわかった。
お父様は蛇塚コーポレーションの出資先を紹介してくださったそうだ。
その結果、ある企業と吸収合併することになり、蛇塚コーポレーションという社名はなくなるものの、社員は全員合併先で雇ってもらえるとのこと。
プライドの高い伯母たちがどう思ったかはわからないけれど、倒産は免れたのだ。
「蛇塚のためにそこまでのことを…!ありがとうございますっ!何とお礼をすれば…!」
私は額を畳に擦り付けるくらいの勢いで、頭を下げた。
「いいんだ、顔を上げなさい。ともかく、これで永美里さんが不本意な縁談を強いられることはないだろう」
「あ、ありがとうございます…っ」
「青人が恥を捨てて私に頼み込んできてね。仕事を辞めて家を継ぐから、どうにかして助けてやって欲しいと。一度は縁を切られた身でありながら、図々しく」
お父様はチラリと青人さんを見やり、皮肉たっぷりに言った。