6月のシンデレラ


だけど、シャンプーは丁寧でとても気持ちが良い。


「…痒いとこ、ないですか」

「はい」


シャンプーを終えて席に戻ると、アシさんはペコっと頭を下げて行ってしまった。
それから馬野さんが来てくれて、いつも通りカットとパーマをしてくれる。


「…あのアシスタントさん、新しい方ですか?」

「ああ、一応スタイリストデビューはしてるんだけど、うちに来たのが最近なんだ。
無口で接客は下手だけど、腕はいいよ」

「そうなんですか」

「…ところで永美里ちゃん、聞いたよ。結婚するんだって?」


馬野さんがそう言った瞬間、後ろからガシャーン!という大きな音がした。
どうやらさっきの新人さんが何かを落としてしまったらしい。


「すみません…」

「大丈夫か?リュウ」

「…大丈夫です、失礼しました」

「ごめんね〜永美里ちゃん」

「いえ」


そんなことより、馬野さんの耳に届いているということは、恐らく伯母だろう。


「私は、まだするつもりないんですけど」

「そっか」

「伯母が乗り気みたいで…どうやって説得しようかなって思ってたところです」

「彼氏がいるって言っちゃえば?」

「いませんよ」


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