6月のシンデレラ


「最近はなかなか二人でゆっくりする時間も取れてないし…」


そう言って青人さんは私を抱き寄せる。

青人さんは美容室で指名をもらえるようになってきた。
喜ばしいことだけど、今までより忙しくなってるみたい。


「仕方ないわ。もう少し頑張りましょう」

「永美里、明日は休みだって言ってたよね」

「え?ええ」

「じゃあ、少し寝坊しても問題ないよね?」


青人さんが熱っぽい視線を向けてきたかと思うと、押し倒され組み敷かれ、覆い被さられる。

待って、待って、待って欲しい。


「青人さんは明日も仕事でしょ!?」

「そうだけど…」

「今日だって疲れてるでしょ?早く寝ないと…」

「一回だけだから」

「〜…っ」

「いい?永美里」


……私がダメって言えないのわかってるくせに。

熱を孕んだ瞳で見つめられたら、もう囚われて逃げられない。
ただ熱に溺れるだけ。


「……んっ」


私の返事を聞く前に唇を塞がれ、そのまま彼に身を委ねた。

あんなこと言ったけれど、本当は私も寂しかった。
青人さんに触れて欲しくて仕方なかった。

自分にこんな情欲に溺れる一面があるなんて知らなかった。

きっとこんな私は、青人さんの前でしか見せられない。



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