6月のシンデレラ
危ない、本当にスキップで歩き出しそうだった。
声をかけられ、我にかえる。
「はい?」
ハットを被った男性だった。
目深に被っていて顔がよく見えない。
「すみません、少し道をお尋ねしたく…××駅に行きたいのですが」
「××駅ですか。ここからだと少し遠いですね。○○駅から乗り換えた方がよろしいかと」
「すみません、この辺の土地勘がなくて…」
「ええっとですね…まず○○駅は――」
道順を教えようとして、
「……!!」
急に口を塞がれた。
その直後、体にバリバリと電流が走る。
「あ…………」
次の瞬間、もう私の意識は遠のいていた。
一体何が――?
――青人さん……。
私は意識を手放した。
よろけて倒れる時、片足だけ靴が脱げてしまった。
道路にカランと、水色のパンプスが片方だけ寂しく転がっていた。