6月のシンデレラ


こんな感じでずっと過ごしてきたので、21年間彼氏はいません。


「そこはいなくてもいるって言ったら?」

「伯母は絶対会わせろって言いますよ」

「そっかぁ」


喋りながらでも軽快な音とともにカットしてくれて、パーマも綺麗にしてくれるから流石は馬野さん。
綺麗になって、ちょっと気持ちも上向きになった。


「ありがとうございました」

「伯母さん、何とか説得できるといいね」

「頑張ります」


何も思いついてないけど、なんて説得したら良いだろう。
なるべく伯母を刺激せず、断る方法はないだろうか。

ぼんやり考えながら歩いていたら、突然肩を叩かれた。


「あの」


それはさっきの新人さんだった。


「これ、お忘れでしたので」


彼が差し出したのは、私の携帯だった。
今まで忘れていたことにも気づいていなかったので、とても驚く。


「すみません、ありがとうございます」

「いえ」

「わざわざありがとうございました。助かりました」


ペコリとお礼をして、立ち去ろうとしたら、またその人に呼び止められた。


「あのっ!」

「はい?」

「…失礼ですが、自分が彼氏役になりましょうか?」


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