6月のシンデレラ
――side.Emiri
ここは、どこだろう……?
はっきりしない意識の中、薄っすらと目を開けた。
薄暗くて少し肌寒い。
ここはどこ……?
「気が付いたようね」
ぼんやりとした視界に映ったのは、腕を組んで楽しそうに見下ろす、祐巳姉さんだった。
その隣には、ハットを目深に被った男性。
そうだ、私はあの人にスタンガンで気絶させられ、ここに連れて来られた。
祐巳姉さんが、どうしてここに――…?
「気分はどう?」
「祐巳姉さん、どうして…」
どうしてこんなことするの――?
「あんたが憎いからよ」
祐巳姉さんはニッコリと微笑んだ。
「虎橋のオッサンと結婚するはずだったあんたが、なんで超イケメン御曹司と結婚することになってんの?」
「それ、は……」
「しかもさぁ、そいつが変な口利きしてくれたお陰で蛇塚は吸収合併されることになったのよ?
私は社長令嬢じゃなく、ただの平社員になった。どうしてくれるの?」
「……」
「あんたはっ、どこまで私をコケにすれば気が済むの!?」
「…っ、コケになんてしてないわ…!」
「黙りなさいよ!!」
段々と頭が回るようになってきた。
お陰で祐巳姉さんの怒鳴り声がよく耳に通るので、鼓膜が破れそう。