6月のシンデレラ
祐巳姉さんは鼻息を荒くして、ゴミを見るような目で私を睨み付ける。
何年も向けられ続けた憎悪の視線だ。
「なんでいつもいつもあんたばっかり……。
顔がいいだけで他には何もないくせに、周りはみんなあんたをチヤホヤする。
だからあんたの人生、めちゃくちゃにしてやるのよ!」
「……それだけ?」
「は?それだけですって?」
「それだけのために、私を攫ったの…?」
私が何をしたというの?
ただ慎ましく生きていきたいと思っているだけなのに。
祐巳姉さんの邪魔をするつもりなんて、これっぽっちもないのに。
「だって、あんたが不幸にならないと私が幸せになれないじゃない」
「…祐巳姉さんは、私にないものを全部持っているのに」
それなのに、まだ私から奪おうとするのね。
何も持たない私から。
「私を貶めないと満足できないなんて、可哀想ね」
祐巳姉さんはカッとなった。
思い切り右手を振り上げ、私の頬を殴った。
「お前が私を憐れむな!!」
「うっ…」
殴られた頬がじんじんと痛む。間髪入れず、髪の毛を鷲掴みにされた。
「いたい…っ」
「よく聞きなさい、ここは冷凍コンテナの中よ。
極寒の中で凍えながら、待っていなさい。
私と九竜青人の結婚の報告を」
な、何を言ってるの……?