6月のシンデレラ
「青人さんってあの武道の名門・九竜家の一人息子なんでしょ?美容師なんてやって超イケメンだし。
そんな最高ランクのハイスペイケメンがあんたの旦那って、おかしいでしょ。
だから私にちょうだい」
「ば、ばかなこといわないで…っ」
「もう遅いわ。あんたから何もかも奪ってやるって決めたんだから。
じゃあね、永美里。結婚報告までに生き延びれたらいいわね」
祐巳姉さんは乱暴に私を突き飛ばすと、コンテナの扉を閉めた。
「やだ、うそでしょ……」
コンテナには鍵が掛けられてしまった。
ガンガンと扉を叩いて叫ぶ。
「出して!!ここから出してっ!!」
もちろん返事はない。
「誰か助けてくださいっ!!」
他に人がいることを期待して、何度も扉を叩いて叫ぶけど、人の声も聞こえない。
頼みの綱の携帯は圏外だ。
どうしよう、どうすればいいの……。
しかもこの極寒の中、体温がどんどん奪われてゆく。
「だめ、もう…はるとさん……」
寝てはダメだと自分に言い聞かせるも、私は意識を手放してしまった。