6月のシンデレラ
…なんだか巧さんと舞ちゃん、いい雰囲気のように見えるけど、どうなのかしら?
舞ちゃんは学生時代から付き合ってた彼氏と別れて、今はフリーだって聞いたけど。
ひょっとしたら、なんて。
* * *
1週間程して退院した。
退院日は青人さんが車で迎えに来てくれた。
運転姿の青人さんもカッコよくて、助手席に座りながらドキドキしてしまう。
「まさか、このパンプスを持って来てくれるなんて思わなかったわ」
私は水色のパンプスを履いている。
片方だけなくしたと思っていたら、見つけてくれていたみたいでよかった。
「せっかくの退院祝いだからね」
「ありがとう」
「永美里、少しドライブしようか」
「ドライブ?どこに行くの?」
「海を見に行かない?」
ドライブデートで海…!
そんなの最高だわ!
「行きたい!」
子どものようにはしゃぐ私の頭を撫で(またキュンとした)、青人さんは車を走らせる。
浜辺に着くと、穏やかで青々とした海が広がっていた。
程よく風が吹いていて気持ちが良い。
二人で手を繋ぎ、浜辺を散歩した。
「お父さんとお母さんが亡くなる前…6月だったかな。3人で海に来て、こうして浜辺を散歩したことがあるの。
その時はもっと波が荒くて、危ないからって手を繋いでたんだけど、私はすごく嬉しかったし楽しかった」
両手を繋いでもらって一緒に歩いて、たったそれだけのことなのに、今もキラキラした思い出として鮮明に覚えている。