三年越しのあの日をもう一度
艶やかな黒髪は腰ほどまであり、色白で首元にほくろがある。制服のチェック柄のフレアスカートと髪が春風に揺れ、翔馬の胸がトクンと音を立てた。

(こんなに綺麗な人、初めて見たな……)

これが、美雪との出会いだった。桜の花びらが二人に降り注ぎ、美雪は空を見上げて「綺麗」と呟く。

「何?何か俺に用?」

見た目は綺麗だが、真面目な委員長をやっていそうな雰囲気の美雪を翔馬は睨み付ける。美雪はキョトンとした顔を一瞬した後、ふわりと笑った。

「用は特にないよ。髪の色が綺麗だなと思ったから話しかけただけ」

その瞳を見た刹那、翔馬は「恋」という感情を知った。



「はよ、卯月」

「おはよう、雨宮くん」

運良く美雪と同じクラスになれた翔馬の学校生活は、ほんの少し楽しみを生んでいた。朝はこうして毎日のように挨拶を交わし、それだけで翔馬は心が穏やかになれる。

入学式にあんな態度を取り、髪の色もピアスもあの時と同じ翔馬は、いじめを受けることがなくてもクラスではやはり浮いた存在となっていた。そんな翔馬に、美雪はいつも声をかけてくれる。
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