三年越しのあの日をもう一度
美雪の指差した観覧車に、翔馬は目を瞬かせる。遊園地から帰る前に観覧車に乗る人が多いという印象を翔馬は抱いていたため、不思議な気持ちになった。

「ああ、乗ろう。観覧車」

美雪の手を自然と翔馬は取っていた。手を握っていないと、美雪が人混みに紛れて消えてしまうような気がしたためである。

「行ってらっしゃいませ〜!」

笑顔のスタッフに見送られ、翔馬と美雪を乗せたゴンドラは頂上を目指して上がっていく。二人で狭い空間にいることに少し胸を高鳴らせる翔馬だったが、外の景色を見ていた美雪の言葉に思考が停止してしまう。

「私、三年生になる前に転校するの」

「は?」

美雪は翔馬の方を見る。その瞳には涙が浮かんでいた。だが、その涙を翔馬は拭いたくても手が動かない。

「私のお父さん、規模は小さいけど会社を経営してたの。でもこの不景気で資金繰りができなくなって、倒産しちゃった。借金は同じく会社を経営してる叔父さんが何とかしてくれるらしいんだけど、それには条件があって……」
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