イケメンシェフの溺愛レシピ
試合開始?
「イタリアに本店を持ち、ロンドン、ニューヨークに次いで東京に出店した話題のイタリアンレストラン、ヴェリタ。本日はそのオーナーシェフのフラヴィオ・マンチーニ氏にお越しいただいております!」
アナウンサーの明るい言葉でスタジオ内に拍手が起こり、画面はフラヴィオのアップになる。
「ハジメマシテ!」
輝くブロンドと爽やかな笑顔。それから少しイントネーションの違う日本語もまた魅力があり、これだけでも視聴率が上がりそうだ。
「また、本日はイタリア語通訳としてイタリアンの石崎哲也シェフにも起こし頂いております!」
「よろしくお願いします。」
アナウンサーに紹介された哲也は静かに、そして丁寧に微笑んで挨拶をした。
「いやー贅沢ですねえ。」
「すごい回に出演させてもらって嬉しいです」
ゲストの女性はもちろん、男性芸人も笑顔で盛り上げてくれて、いよいよ始まった。
まずは事前ロケのVTRが流れて、ヴェリタの紹介やイタリア料理の‘真実’が紹介される。その裏で、スタジオでは哲也とフラヴィオが何やらイタリア語で話をしていた。何を話しているかまではわからないが、何かが起こりそうな雰囲気を感じて綾乃はじっと彼らを見つめる。いい意味ではなく、ドキドキしていた。
「ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんがイタリアのカルボナーラに生クリームは使いません」
フラヴィオのイタリア語を哲也が通訳する。ところどころ声に強弱をつけて、フラヴィオの意思をきちんと反映させているようであり、シェフとして伝えるべきところをきちんと強調させているようであり、話を聞いていても理解しやすい。イタリア語を通訳できる人は数多くいれども、やはり哲也に頼んで正解だった、と思いながら綾乃は二人が並んでいる姿をに見守る。
「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノはレストランで食べる料理というより家庭料理です。でもシンプルゆえに料理人にとっては腕が試される料理でもあります。」
と、そこまで哲也が通訳したところで、フラヴィオのイタリア語だけが響く。哲也は訳すのをためらっているようだった。五秒だって十秒だって貴重な生放送の場面で何を言っているのだろう。
綾乃はもちろん、周囲のスタッフ、司会を務めるアナウンサーの女性までもが不安げに見守る。
そのとき、フラヴィオが言った。
「どっちがオイシーか、対決」
対決。
それは流暢な日本語。
そう日本語で言ったのは哲也ではない。金髪の髪の毛に薄いブラウンの瞳のフラヴィオだ。
ハイ、とフラヴィオは哲也にフライパンを渡す。その瞬間、どこかで試合開始のゴングが鳴り響いた気がした。
アナウンサーの明るい言葉でスタジオ内に拍手が起こり、画面はフラヴィオのアップになる。
「ハジメマシテ!」
輝くブロンドと爽やかな笑顔。それから少しイントネーションの違う日本語もまた魅力があり、これだけでも視聴率が上がりそうだ。
「また、本日はイタリア語通訳としてイタリアンの石崎哲也シェフにも起こし頂いております!」
「よろしくお願いします。」
アナウンサーに紹介された哲也は静かに、そして丁寧に微笑んで挨拶をした。
「いやー贅沢ですねえ。」
「すごい回に出演させてもらって嬉しいです」
ゲストの女性はもちろん、男性芸人も笑顔で盛り上げてくれて、いよいよ始まった。
まずは事前ロケのVTRが流れて、ヴェリタの紹介やイタリア料理の‘真実’が紹介される。その裏で、スタジオでは哲也とフラヴィオが何やらイタリア語で話をしていた。何を話しているかまではわからないが、何かが起こりそうな雰囲気を感じて綾乃はじっと彼らを見つめる。いい意味ではなく、ドキドキしていた。
「ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんがイタリアのカルボナーラに生クリームは使いません」
フラヴィオのイタリア語を哲也が通訳する。ところどころ声に強弱をつけて、フラヴィオの意思をきちんと反映させているようであり、シェフとして伝えるべきところをきちんと強調させているようであり、話を聞いていても理解しやすい。イタリア語を通訳できる人は数多くいれども、やはり哲也に頼んで正解だった、と思いながら綾乃は二人が並んでいる姿をに見守る。
「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノはレストランで食べる料理というより家庭料理です。でもシンプルゆえに料理人にとっては腕が試される料理でもあります。」
と、そこまで哲也が通訳したところで、フラヴィオのイタリア語だけが響く。哲也は訳すのをためらっているようだった。五秒だって十秒だって貴重な生放送の場面で何を言っているのだろう。
綾乃はもちろん、周囲のスタッフ、司会を務めるアナウンサーの女性までもが不安げに見守る。
そのとき、フラヴィオが言った。
「どっちがオイシーか、対決」
対決。
それは流暢な日本語。
そう日本語で言ったのは哲也ではない。金髪の髪の毛に薄いブラウンの瞳のフラヴィオだ。
ハイ、とフラヴィオは哲也にフライパンを渡す。その瞬間、どこかで試合開始のゴングが鳴り響いた気がした。