神山銀二の受難

狭くて小便臭い通路を突き進んで行ったとき、目の前に何かが横たわっているのに気付いた。


それが迷子のチビとの出会いだ。


雨に打たれてぐったりしていたが、抱き抱えると意識はあった。


丸く小さい目で俺を凝視していた。




『おい、チビ。どーした?おかあちゃんは?』



思わず問い掛けたが反応は無い。



雨に打たれた所為で体温が下がっていた。


チビの目もだんだん虚ろになっていく。





……まずい。



内心そう思った。





内心そう思った時には、



『ったく、しゃーねーなぁ』






俺はチビを抱き抱えてアパートに向かっていた。


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