神山銀二の受難
早朝呼出し 神山銀二
五人目の被害者が見つかったかもしれない……
芦原から連絡を受けた俺はアパートを飛び出した。
芦原っていうのは俺の後輩で、今どきの奴らしく、ちゃらちゃらした感じだが仕事はできる。
(因みに、俺のことをヤクザみたいといったのもこいつだ)
芦原から聞いた話し、現場は俺の住むアパートの目と鼻の先だった。
まだ確定ではない。しかし少しでも早く現場に行かないと……。
走って五分、現場に到着する。
何台かのパトカーと、早朝にもかかわらず多くの野次馬が見える。
鑑識はまだのようだ。
『神山さんっ』
野次馬の向こうで芦原が呼んだ。
あいつは昨日も帰れなかったらしい。ネクタイもシャツも同じだ。
『芦原、どうだ?』
そう言って俺は現場を見た。
そこにはかつて人だったものが、レールと枕木の上に散らばっていた。
『現場に出血の跡が少ないのと、衣類の類が見当たらないんで、例の続きの可能性が高いっす』
『…そうか』
何とも言えない臓物の匂いに思わず顔をしかめた。
これだけには慣れない。
現場は表通りから一歩入った古いアパートが立ち並ぶ一角で、夜は人通りが少ない。
夜中のうちに全裸の遺体を運んで線路に置いたんだろう。
いつもの手口だ。
お陰でこっちは遺体の身元もなかなか判らないし、ひどい時は五体満足に揃わない。
証拠隠滅か、愉快犯か…。
『芦原』
『はい、何すか先輩』
『鑑識来たら、いつも通り野次馬の写真頼むわ』
『了解っす』
愉快犯ならば、必ず現場を見に来るだろう。
『ところで先輩』
『なんだ?』
『その子なんすか?』
芦原はチビを指差す。
……………。
……忘れてた。