日替わりケーキとおしゃべりタイム

ほろ苦ガトーショコラ

「別れよう」

3ヶ月ぶりに会った彼氏に、会って早々にそう告げられた私は、涙を流すわけでも、引き留めるわけでもなく、

「うん」

と、一言だけ返事をした。

スーツを纏った彼氏、いや、元彼の背中を数秒だけ見つめて、私は小さくため息をついた。

予想はしていた。1年半付き合ったと言っても、会うのは数ヶ月に一度。私の忙しさが原因だ。

忙しいというより、私の手際が悪すぎて、仕事がどんどん溜まって、自分自身で忙しくしているだけ。

せっかく…仕事うまくいったのにな…。

いいことが続く日なんて、私に訪れることがあるのだろうか。

バックを肩にかけ直して、彼と正反対の方向へと歩き出す。

ヒールの音がカツカツと響き、その音が私の心にグサグサと突き刺さっていく感覚が走る。

癒しが欲しい…。

ふと、そんな感情が湧き上がり、自分の家への帰り道から少し外れる建物の間の通路へと入っていく。

狭い通路を抜けて道が開けると、そこには海に面した道路があり、洋風な建物が立ち並ぶ。

街灯に照らされたこの景色に、少しだけ癒しをもらい、ぎゅっとバックを握る。

ほっと息を吐き、オレンジ色のランプ風の街灯に照らされた一軒の喫茶店のおしゃれな扉に手をかけた。