日替わりケーキとおしゃべりタイム
「明日会うんだし、別に無理して話さなくていいよ。俺の目で見て、感じて、それで飛鳥の家族のこと知ることができればいいから」

そう言って、ゴクゴクっとビールを流し込む井上くん。

こう言う時の井上くんの言葉って、すごく私の気持ちを軽くしてくれる。

「…ありがとう。…そういえば、温泉ってどこの?」

「あっ、そういえば場所まだだったよな。ここ」

井上くんは、スマホの画面を私に差し出す。

えっ…ここって…。

「…高級温泉旅館だよね…?」

桁数がひとつ違うんんじゃないかって思うほどの高級旅館で、しかもお部屋に露天風呂が付いている。

「せっかく行くんだったら、ゆっくりくつろげるところがいいから。大丈夫、俺が勝手に決めちゃったから、飛鳥は値段気にするなよ」

「だ、だめだよ。私も半分出すよ」

慌ててそう言うと、井上くんは、私の頬にそっと触れて、優しく微笑んだ。

「だめ。俺にカッコつけさせてもらうよ」

「…で、でも…」

そんなすぐには甘えられない。

「うーん…じゃあさ、行き帰りに何か食べたり飲んだりするときは、飛鳥にお願いするってのはどう?」

「そ、そんなんじゃ全然ウィンウィンじゃない」

「そう?まっ、いいから。今回はそれで行こう」

井上くんはそう言って、ゴクゴクっと大きな音を立ててビールを飲み干した。





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