日替わりケーキとおしゃべりタイム
ガチャッ

「た、ただいまー」

いつものように、実家の玄関の扉を開ける。ただ、いつもと違うのは、隣に井上くんがいるということ。

「おかえりなさい!あら、はじめまして、飛鳥の母です。娘がいつもお世話になってます」

リビングから、満面の笑顔で出てきたお母さんは、丁寧に挨拶をした。

すごい、周りにお花が咲いているかのようなテンション。

「はじめまして。井上翼といいます。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」

かしこまった言い方の井上くんが、ちょっと新鮮で、思わずクスッと笑ってしまった。

「お父さんは?」

「予想通り、拗ねてる最中よ」

お母さんは困ったように苦笑いをして、リビングに視線を移した。

やっぱり…。

「あの…これ、お口に合うかわかんないんですが、バームクーヘンです」

「あらあら、ありがとう。お父さんの大好物よ。お茶入れるわ。上がっていって」

お母さんはルンルン気分で、リビングへと入っていった。

井上くんと一緒にリビングに入ると、ソファーに座って釣り雑誌を読んでいるお父さんの後ろ姿が目に入った。

そして、呆れたような表情でお父さんを見ている、一年ぶりに会うお姉ちゃんが、お父さんと向き合うように足を組んで座っている。




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