日替わりケーキとおしゃべりタイム
「はいはい。お父さんも、良い加減、井上くんに挨拶したら?」

お姉ちゃんは、お父さんの手から釣り雑誌を抜き取って、ちょっと鋭い視線を向ける。

こ、怖い…。けど、きっとお姉ちゃんなりに気にかけてくれたんだと思う。

お父さんは、頭をポリポリとかきながら立ち上がると、井上くんと私の方を向いた。

「はじめまして。井上翼といいます。飛鳥「君は…飛鳥のどこが気に入ったんだ?」

えっ。

「お、お父さん、そんなこと今聞かないで」

「あら、私も聞きたいわー」

私の制止を無視して、お姉ちゃんがちょっと楽しんでる様子で追い打ちをかける。

「い、井上くん、答えなくていい「はいどうぞー。井上くんの持ってきてくれたバームクーヘン。はちみつの香りがすごくいいのよー」

お母さんが、あえて空気を変えるように、明るく穏やかな口調で切り分けたバームクーヘンと紅茶を持って来た。

「ほら、飛鳥も翼くんも、こっちにきて一緒に食べましょう」

お母さんに促されるように、私たちもソファーに座った。

ふわっと、甘いはちみつの香りが漂う。

ふと、お母さんと目があった。ふふっと微笑むお母さんに、やっぱりさっき、空気を変えようとしてくれたんだって察した。





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