日替わりケーキとおしゃべりタイム
タバコの煙をふーッと吐き出して、夜空を見上げる。

飛鳥は自分で気がついていないけど、かなり整った顔立ちしているし、ぶっちゃけ、社内にライバルになりかけてた奴らだって何人もいる。

それを気づかれないように、早めにけん制していた俺。このことは口が裂けても飛鳥には言えない。

でも、別に俺は、飛鳥の顔に惚れたわけじゃない。飛鳥自身が出すあの雰囲気に引き寄せられた。

一緒にいてこんなに居心地がいい女性のと出会ったのは、正直初めてだった。冗談だって言えるし、素の自分をさらけ出すこができた。

『…飛鳥に、社長の妻は荷が重すぎるんじゃないか』

今日、飛鳥のお父さんに言われた言葉を思い出す。

その言葉を言われた俺は、まず、どうして苗字を隠してた俺が社長の息子だってバレていたのか疑問が浮かんだ。

そんな俺の様子に、さっきまで眉間に皺を寄せていた飛鳥のお父さんは、ふっと表情を緩めた。

「…ちょっとだけ、人脈が広いんでね」

いや、その余裕、ちょっとどころじゃなさそうだけど…。

と思った時、ふと、以前、噂を耳にしたことを思い出した。

〝〇〇商事に、ものすごい人脈持ってる人が居るんだけど、全然そんな雰囲気出してない人なんだって〟

〝あー…どこかで聞いたな…その人と繋がると、どんな気難しい相手とでも接待の場を設けてくれるって〟

へー…そんな人いるんだ。

他人事のように思っていたけれど、まさかこんな身近にいたとは、驚きで、最初は言葉が出なかった。

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