日替わりケーキとおしゃべりタイム
〝確か、親しい人からは、梅さんって呼ばれてるんだって…〟

その〝梅さん〟は、紛れもなく目の前にいる飛鳥のお父さんだろう。

梅さんって、勝手に女性かと思ってた…。接待とかって言ってたし…。

『さすが、察しが早い。次期社長』

飛鳥のお父さんは、ふっと余裕の笑みを見せる。

『…いや、まだ先の話なんで…』

『…まあ、先だとしてもだ、あの飛鳥が社長の妻として、器用に振る舞えるとは思えないんだ…。あの子は人が良すぎる』

人が良すぎる。

まあ、納得。

いや、でも…

『負担になることはさせませんし、表舞台にはなるべく出る機会は減らします』

と言い切った後、いつのまにか、お父さんの中ではすでに結婚する前提で話が進んでいることに気がついた。

『…君は、婚約者がいた気がするんだが』

『それは、俺がこの会社を継ぐ条件として、将来の結婚相手は自分で決めると、親父に伝えてあるので断ってます』

そこまで知ってるなんて。ごまかしは一切できない。いや、誤魔化すつもりは無いけれど。

『…あの子は、傷ついたとしても、自分に非があったと思ってしまう子だから、大切にしてほしい』

ああ、そうか、飛鳥のお父さんは、婚約者の存在が気がかりだったんだ…。

『大切にします。絶対に傷付けません』

そう言い切った俺を見て、飛鳥のお父さんは真剣な表情で一回だけ頷いた。





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