日替わりケーキとおしゃべりタイム
私が今まで目にしたことのない、明らかに高級そうなデザインの缶ビールに、一瞬手を伸ばすのを躊躇する。

「言っとくけど、これも貰い物だから遠慮するなよ?」

心境を察した井上くんは苦笑いで私の前に缶ビールを置く。

お肉といい、このビールといい、高級なものをもらう井上くん交流関係って…。

と思いながら、

「有り難く、いただきます」

とお礼を述べる。

チラッと井上くんの表情を伺うと、満足した様子で私の行動を見ていて、心の底から安堵した。

なんだろう、井上くんって、同い年のはずなのに、私とは全然違う大人の余裕というものが兼ね備えられている。

歳の離れたお兄さんとか、お父さんとか、そんな感じ。

プシュッとリビングにビールを開ける音が二つ響く。

「梅田、お疲れ」

缶同士をコツンとぶつけて、飲みっぷりよくごくごくとビールを流し込む井上くん。

そういえば、明日休みなんだっけ。でも休日出勤は確実だな…。

そう思いながら私もビールを一口飲んだ。

「んっ、なにこれ!?激うま」

びっくりするほどの美味しさに、思わず本音が言葉として口から出る。

「だろ?俺もビビった」

井上くんも笑いながら、すき焼きをどんどん煮ている。



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