日替わりケーキとおしゃべりタイム
「俺、飛鳥と別れる気なんてないし、許嫁の件だって断るよ」

「で、でもそれだと会社が…」

「うん。だから、今、他の支援してくれそうな会社、個人的に探してる」

力強くそう言うと、井上くんは立ち上がって大きな窓の前から街を見渡した。

その後ろ姿には、大きな覚悟を背負っているようなそんな気がして、私の安っぽい言葉をかけちゃいけないと思った。

「…自分が身を引けば、なんて考えるなよ?」

「えっ」

さっきよぎったことを指摘されて、ビクッと肩が跳ねた。

「…やっぱり…」

呆れ顔で私の方を振り向くと、苦笑いで近づいてきた井上くんは、私のおでこに軽くデコピンをした。

「…飛鳥、充電させて」

おでこを抑える私を見て、くくっと悪戯っぽく笑うと、そっと私の体を抱きしめた井上くん。

お互いの心臓の音がシンクロして、それが妙に心地いい。

「しばらく、ずっと会社に缶詰状態になると思う。必ず親父のこと説得させる材料揃えるから。だから、寂しい思いさせると思うけど、待ってて欲しい…」

耳元でそう呟いた井上くんの言葉は、力強くて、私はすぐに頷いていた。

そして、私も井上くんの背中に手を回して力を込めた。


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